細き川に溺れたい

   Volo equitare in unda FOSOCAUA... 細川家に関する独り言を綴るだけ

細川重賢と由婦夫人の可愛い話 / 資料紹介


近世細川家八代目、肥後の鳳凰と称される細川重賢と、正室である由婦との可愛い話が載っているセミナー資料をご紹介。
熊本大学附属図書館さんは、いつも素敵な資料をリポジトリにあげてくださっていて、たいへんありがたい!これからもよろしくお願いします!(強欲)

川口恭子, 第3回 永青文庫セミナー 細川重賢夫人の手紙, 東光原 : 熊本大学附属図書館報, 58, 2008

こちらから読めます。

重賢夫人について

久我通兄の娘で、由婦・有隣院という。祖母は細川綱利(藤孝から数えて5代目当主)の姪なんだそうな。
ということで、まぁ親戚ではあるんですね。細川家は全くの他家から娶るよりも、こういう親戚・姻戚との婚姻を重視する傾向にありますよねぇ(黒田家の方を見ながら)
彼女は21歳のときに31歳の重賢に嫁いできた。(藤孝と麝香さんと同じ歳の差ですね←)
お手紙では、「ゆふ」となっていたり「蘭舟(船)」となっていたりする。後者は俳号で、重賢への宛名も「花君」という俳号を使っていたりするみたい。俳号でお手紙出しあう可愛い夫婦。

こちらのブログでも彼女の記事がありました↓
blog.goo.ne.jp


失明されていたんだぁ・・・
自分に子ができないということで、重賢に側室をとるように進言するというところからも、すごく冷静で聡明な女性が浮かび上がりますね。
(※現代の文脈において子どもができない女性を蔑視するような意図はありません)

手紙の素敵なところ

資料の中では、由婦の散らし書きの書状も掲載されています。アイキャッチ画像のやつです。綺麗ですなぁ・・・
こういうものが書けないといけなかったなんて、たいへんですわ・・・(私には無理)

さてさて、重賢へのお手紙の中で、素敵なところが何個もあった。

  • 能の稽古ができてご機嫌なのはいいけど、宙返りなどはしませんように
  • 弟君が出てきて一緒に能の稽古ができて、兄弟そろってよかったですね
  • 私の好物の干れいし(茘枝)を送ってくださってありがとう
  • 色々と倹約すべきとのことわかっています。江戸でも気をつけているけど至らないところもあるかもしれません。また指摘してください。

等々。
由婦さん、すごくすごく重賢のことをたてているなぁって感じ。

それにしても、能に関するところがwwww可愛すぎてwwwww
テンション上がりすぎて宙返りとかすんなよって嫁に言われる旦那wwwwww
この手紙は明和5年のものらしいので、重賢が47歳の時かな?
47歳の当主に対して、宙返りには気を付けろっていうのめっちゃ可愛くないですかwwww
あと兄弟集まって能ができてよかったねってのも可愛いwwww

丹後時代の細川家の能狂いの様子は有名ですが、その後も相変わらず能が家内で流行ってたんだなぁとよくわかりますね。
能道具とかもいっぱい永青文庫に伝わってるもんねぇ。
2020年に永青文庫美術館で開催された「翁―大名細川家の能の世界―」でも名品がいっぱい出展されてました。

あとは、倹約に関する部分もね、すごく重賢を象徴しているというか。
由婦夫人も既によくよくわかっているんでしょうが、でも重ねて重ねて「倹約しろよ」って言ってきている重賢に丁寧に返事しているのがすごく良いなぁ。

子どもたちに関しても、細かな様子を報告している。
斧(娘なのかな?)は乳母より自分を慕ってくれているって嬉しそうな感じ。
いずれの子どもも由婦自身が腹を痛めて産んだわけではないけれど、しっかり正室としてお世話をしている感じなのかなぁ。

できる当主の嫁って感じがする由婦さんと、兄弟と一緒に能ではしゃいじゃう重賢の、可愛い夫婦のご紹介でした。