細き川に溺れたい

   Volo equitare in unda FOSOCAUA... 細川家に関する独り言を綴るだけ

徒然草扇面:幽斎麝香夫妻の尊い案件 / 論文紹介


以前、川平氏徒然草に関する論文を2本紹介した。こちらを参照↓
hohshoy.hatenablog.com

今回はそんな川平氏の松井家と徒然草に関する論文をご紹介。

川平敏文, 肥後八代城主松井家と徒然草:近世極初期の扇面と屏風絵, 国文研究, 55, 1-18, 2010

こちら↓から読めます。
Prefectural University of Kumamoto: 肥後八代城主松井家と徒然草 : 近世極初期の扇面と屏風絵


徒然草は、慶長時代にブームとなる直前、幽斎さんがその面白さにハマって周囲の人に盛んに薦めていたことが、これまでの論文でも何度も指摘されていた。
今回は、そんな幽斎さんの懐刀ともいえる松井康之を初代とする近世松井家に伝わっている徒然草関係の資料に関する論文。
おそらく幽斎さんを通して、松井家にも徒然草のブームは来てたってことですな。

松井家に伝わっている徒然草関係の資料

八代市立博物館未来の森ミュージアムに寄託されている松井文庫所蔵品の中には次の4点の徒然草関係の資料が現存している。

この論文では後者2点について、主に論じられている。

徳川家康筆と伝わっている扇面については、秀次事件の時に主君・忠興を助けるために奔走して家康にお金を借りに行った康之が大汗をかいていたところ、この扇子を使って涼みなさいって下賜したものらしい。
家康の直筆で「花はさかりに」の段が書いてあるそうな・・・(直筆かどうかの真贋は不明)

家康もけっこう徒然草に興味があった人だそうで、林羅山の注釈書にエピソードが載っているらしい。

屏風の方は、徒然草絵の中でももしかしたら「現存最古の遺品」かもと指摘されているものとのこと。
ただ残念ながらあまり状態が良くないらしい・・・
論文にはちょろっと写真の載っています。

実は論文の内容とは関係のない本題

この論文の一番萌えたところは、序論のところでした(←エ)
熊本県立美術館に寄託されている永青文庫の所蔵品には、忠興筆の「徒然草」書写本と「徒然草扇面」があると紹介されていた。

この「徒然草扇面」ですが・・・
こちら、幽斎さんの正室・麝香(光寿院)の筆らしい・・・・!!!!!

しかも、しかも、抄写されているのは「徒然草・第二十六段」の本文らしいのだが、コレ、コレ・・・・

烏丸光広「耳底記」で幽斎さんが「古歌古事などをもかすませて、二重も三重も上をかきたる」ということの例として挙げていた章段らしいのですよぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!


つまり、つまり、どう考えたって、幽斎さんが光広にしたのと同じ話を麝香さんにしてるってことだし、それを覚えていた麝香さんが扇面にわざわざ抄写したってことでしょぉぉぉぉぉぉぉぉ(号泣)


っはぁぁぁぁぁぁ
細川夫妻尊い・・・・・・・・・・・・

尊すぎたので、アイキャッチ画像にもしてみました。

こういうものが、400年を経てきちんとお家の宝として伝わっているというのが細川家の素晴らしいところだと思うのですよ。
幽斎さんは近世細川家にとって、やっぱりちょっと特別な存在ですよね。
武家ではあるけれども文芸的な文脈での存在感が大きいし、宮家とのつながりさえあるのですから、子孫が「初代すげぇ」ってなってもなんらおかしくない。

そんな幽斎麝香夫妻の、ある意味で仲良しの証としての扇が、脈々と受け継がれてきたんだと考えると、もう、泣けるし萌えるね・・・・
松井家の話だったはずなのに、ごめんな松井・・・・・松井のことも大好きなんだが、いかんせんこの夫妻の尊さには負ける・・・